今週は、「Physics and Industry」というワークショップに参加してきました。
ワークショップの目的はずばり、物理研究者と産業の接点を持つこと。
およそ40人の物理研究者が5つの企業が持ち込んだ課題に取り組みました。
私が参加したプロジェクトは、医療現場などでの利用が期待されるバクテリア検査技術の構築です。
多種多様なバクテリアの有無、生死、量を、定量的にどう評価するかが課題。
医療関係の方が使うわけですから、使い方は簡単でかつ当然低コストでなければなりません。
物理的な視点での生とは何か、死とは何かなどおもしろい論点もあります。
私たちのグループのアプローチは、光学測定と電気測定の併用。
サイエンスの論文などを参照しながら、あーでもないこーでもないと議論してました。
今回の経験を通して痛感したのは、まず私の英語力のなさ。
私のグループは私以外が全てオランダ人で、彼らの英語はとても流暢です。
こちらに一年以上いるとはいえ、やはり典型的な日本人。
オランダ人の早い英語についていけません。
わからないときは議論を止めて質問するようにと言われるのですが、ほとんどの議論がわからないからその都度止めていたら全体の議論が進みません。
2割くらいがわかるかな~という感じで流れに身を任せていました。
次に、個人プレーが主の物理研究者が協調することの難しさ。
研究者は個々各々がそれぞれの興味があるテーマに飛び込んでしまうため、誰かがリーダーシップをとりグループがまとまって一つの課題に取り込むことがどうしても苦手だなと感じました。
ちなみに私は議論の内容がわかっていないのですから、リーダーシップをとれるわけがありません。
最終的には、5日間という短い期間のため未消化な部分を多く残しながらも、45分に渡るプレゼンテーションを無事にこなして終了です。
今回のワークショップは、交通費、宿泊費、そして食事やお酒も含めて、全てワークショップ持ちの高待遇です。
日本では全く考えられませんが、オランダではあたりまえなのです。
オランダも資源が無い国なので、科学技術にかけるしかないという覚悟が感じられます。
オランダの博士課程には、主にヨーロッパとアジアから多くの優秀な学生が集まってきます。
特に、ロシアやイタリア、スペインなど不安定な国からオランダへの移住を真剣に考慮して人も多いので、モティベーションも高く、本当にみな優秀です。
企業から見ると、若くて優秀な頭脳を小額のお金で活用できる。
研究者から見ると、専門外の研究に接して視野を広められ、企業での研究開発のスタイルを模擬体験できる。
国から見ると、アカデミアとビジネスの交流を促進できる。
と、まさにいいこと尽くめのプロジェクトでした。
このようなワークショップは、1960年頃からイギリスの数学者の間で始まり、今では世界中の数学コミュニティーで広がっているとのこと。
オランダでは3年前からこのプロシージャーを元にこのワークショップを始め、とても好評なので来年以降も続けていくことが確定しています。
ちなみに、オーガナイザーにこのプロジェクトのデメリットは何かと聞いたのですが、回答は「特にない」。
気になるご予算ですが、オーガナイザーがトータルで200万円ほどと教えてくれました。
そのうち半分強を国の機関が、残りを企業からのお金でまかなっています。
日本の博士の就職率は6割などととても危機的な状況にあると聞いています。
というわけで、まさに日本でこそこういうワークショップがあればいいのになーとずっと感じていました。
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