珍しく、「無限を読みとく数学入門」という難しそうな本を読んでみた。
ま、一応、科学で飯を食っている人間として、知的なことに興味を持とうかと。
で、この本の中に、たまに経済政策の議論を効いていると出てくるく「乗数効果」という言葉に関する解説が出ていて面白かったので、ご紹介します。
参考文献は全て、「無限を読みとく数学入門」ですので、よろしければ。
抜粋だけするので興味がある人は、「無限を読みとく数学入門」の48ページと49ページをご参照下さい。
まず、乗数効果の説明部分。
ここで不思議なのは、政府がたったイチ単位分の鉄骨を追加需要したのにすぎないのに、つまり雇用者ひとり分の注文を出したに過ぎないのに、全体ではなぜか雇用量は10人分も増えて完全雇用が達成された、という点である。政府の需要の10倍もの雇用が生み出されている。これを「乗数効果」という。
なるほど。
夢のような現象。
さすが数学書、理論的によく説明されています。
で、気になったのは、次の文章。
これ、本質だと思います。
ここで付記したいのは、このような「乗数効果」は、その後、理論的にもデータ的にも疑問視されている、という点だ。
理論的に言うと、この話には政府がどこからお金を持ってきたのか、が明記されていない。
公共事業をするために国民から税金としてお金を吸い上げるとそこではこれと逆のプロセスが起きるだろう。
本来あったはずの鉄骨の需要が消え去り、さきほど解説したプロセスの需要を打ち消してしまうはずである。
したがって、需要の増加は政府による1単位の鉄骨だけとなるはずだ。
実際、データによる実証研究でもほぼ「1」という結果が出ている。
ケインズのいう「乗数効果」は、数学的には興味深いが、現実的にはさまざまな面で妥当ではない。
なーるほど。
多くの経済学者が「乗数効果を考えていない」ということを語っているが、本質はこういうコトね。
今、政府は、消費税を上げて公共投資に使うお金をだそうとしていて、このことが景気を冷やすとよく言われているが、このことなのね。
と、日頃の疑問が一つ解決した有意義な読書でした。
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